トヨタ・シエンタはフィアット・パンダのパクり?デザインを徹底比較して真相を解説

トヨタ・シエンタはフィアット・パンダのパクり?デザインを徹底比較して真相を解説

トヨタ・シエンタが2022年にフルモデルチェンジした直後から、「フィアット・パンダに似すぎている」という声がカーマニアの間で広がりました。そしてイタリアのメディアまで巻き込んだ国際的な話題になったのです。

結論から言うと、両車には見た目の類似点が多数あり、しかもデザインコンセプトのキーワードまで酷似しています。ただし、「パクり」と断言できるかどうかは少し別の話です。

この記事では、両車のデザインを具体的に比較しながら、類似点と相違点、そして「パクり疑惑」の真相を解説していきます。

目次

フィアット・パンダとトヨタ・シエンタ、どんなクルマ?

まず両車を簡単に紹介しておきましょう。それぞれがどんなコンセプトで生まれたクルマなのかを知っておくと、デザイン比較がより深く理解できます。

フィアット・パンダ(3代目 319型)

フィアット・パンダは、イタリアを代表する国民的コンパクトカーです。初代は1980年に登場し、かのジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけた名作として知られています。

今回のデザイン比較の主役となる3代目(319型)は2011年に発表され、日本では2013年から販売されました。デザインを担当したのは、フィアットデザインセンターのデザイナーであるロベルト・ジョリート氏。このモデルはその後、2024年まで約13年にわたり販売されたロングセラーモデルです。

日本での販売価格は、主要グレード(イージー)で約260〜281万円。ボディサイズは全長3,655mm×全幅1,645mm×全高1,550mmと、コンパクトなサイズ感が特徴です。

トヨタ・シエンタ(3代目 2022年型)

トヨタ・シエンタは、ファミリー層を中心に長年支持されてきたコンパクトミニバンです。3代目は2022年8月に発売され、先代の「アクティブで躍動的」なデザインから一転、「やさしく、暮らしに寄り添う」デザインへとシフトしました。

2025年の年間販売台数は106,558台(日本自動車販売協会連合会調べ)で、ミニバンカテゴリー1位を維持するほどの人気モデル。メーカー希望小売価格は207万円〜、ボディサイズは全長4,260mm×全幅1,695mm×全高1,695mmで、5ナンバーサイズを守りつつも広い室内空間を実現しています。

「シカクマル」vs「スクワークル」──コンセプトが驚くほど一致

両車のデザイン比較において最も注目されているのが、それぞれのデザインコンセプトキーワードです。

新型シエンタのデザインコンセプトは「シカクマル」。トヨタ公式の説明によれば、「コーナー部を丸くしてコンパクトに見せ、取り回しの良さにもつながるシカクマルシルエット」とされています。四角いフォルムに丸みを持たせる、という考え方です。

一方、フィアット・パンダ(319型)のデザインコンセプトは「スクワークル(Squircle)」。スクエア(Square=四角)とサークル(Circle=丸)を合わせた造語で、「正方形の効率性・堅牢性と、円形の心地よさ・柔軟性を兼備した形状」を意味します。デザイナーのロベルト・ジョリート氏が提唱したもので、アップル製品にも取り入れられている概念として知られています。

日本語で言い換えると、スクワークル=「四角+丸」、シカクマル=「四角+丸」。ほぼ直訳です。コンセプトの名前だけを見れば、実質的に同じことを指していると言わざるを得ません。

これが判明したとき、カーマニアやデザイン関係者の間で「コンセプトまで一致しているのは偶然とは思えない」という声が広がりました。

参考:第772回:イタリアのメディアも続々報道 やっぱり何かに似ている(WEB CG)

具体的にどこが似ている?外観デザイン類似ポイントを解説

コンセプトの類似にとどまらず、実際の外観デザインにも多くの共通点があります。イタリア在住の自動車ジャーナリスト・大矢アキオ ロレンツォ氏が詳細に分析しており、その内容をもとに主要な類似点を整理しました。

フロントまわりの類似点

最も目立つのがフロントの処理です。シエンタのフロントは、左右のヘッドライトを細いガーニッシュで結ぶデザインを採用しています。これはフィアット・パンダの特徴的な手法とよく似たものです。

また、シエンタのラジエーターグリルは、横に広い太い横バーの中央にナンバープレートを配置するレイアウトです。この「太い横バーグリル」は、フィアットが2009年の「プント EVO」で初めて導入したデザイン言語で、3代目パンダにも継承されています。

サイドビューの類似点

サイドから見た時の印象も非常に近いと言われています。特に指摘されるのが以下の3点です。

まず、ブラックアウトされたCピラーの処理。その直後に続く、上端と下端を絞ったクオーターウィンドウのデザインが、パンダのそれと瓜二つです。次に、ドアハンドル直下を貫通するキャラクターライン。前後ドアに貼られた太いサイドプロテクターモールも、両車に共通するデザイン要素です。さらに、シエンタの前後フェンダーを覆う黒い樹脂パネルは、「パンダ クロス4×4」のイメージを想起させるとも言われています。

リアまわりの類似点

リアについては、縦型のテールランプが共通点として挙げられています。パンダの特徴であるサイドにまで回り込んだ縦型テールランプと、シエンタのリアランプの構成が似た印象を生んでいます。

ボディカラーの類似点

デザインだけでなく、ボディカラーの類似も話題になりました。シエンタが最もカタログで前面に出しているボディカラー「アーバンカーキ」が、フィアット・パンダの標準色「グリージョモーダ(グレー系)」と非常に近い色合いだったためです。クルマの全体シルエットが似ている中でカラーまで近似しているため、並べて見ると「同じブランドのクルマ?」と感じる人が続出しました。

参考:第772回:イタリアのメディアも続々報道 やっぱり何かに似ている(WEB CG)

スペック・価格の比較表

デザイン面での類似点は多いものの、実際のスペックや車格は大きく異なります。両車のスペックを比較してみましょう。

項目トヨタ・シエンタ(3代目)フィアット・パンダ(3代目 319型)
発売年2022年(日本)2011年発表 / 2013年(日本)
ボディタイプコンパクトミニバンコンパクトハッチバック
全長4,260mm3,655mm
全幅1,695mm1,645mm
全高1,695mm(4WDは1,715mm)1,550mm
ホイールベース2,750mm2,300mm
乗車定員5人 or 7人5人
エンジン排気量1,490cc(ハイブリッドあり)875cc(ターボ)
燃費(WLTCモード)18.3〜28.8km/L16.3〜16.6km/L
駆動方式FF / 4WD(E-Four)FF / 4WD(パートタイム)
メーカー希望小売価格207万円〜(X・ガソリン)260万円〜(イージー)
デザインコンセプトシカクマルスクワークル(Squircle)
生産国日本イタリア・ポーランドほか

こうして並べてみると、シエンタはパンダより全長で約600mm長く、全高も145mm高いことがわかります。用途も、シエンタは最大7人乗りのファミリーミニバンであるのに対し、パンダは5人乗りのコンパクトハッチバック。似ているように見えても、クルマとしての性格はまったく違います。

イタリアのメディアはどう反応したか

2022年8月23日、トヨタが新型シエンタを発表した直後から、イタリアの自動車メディアが次々と反応しました。その数は発表翌日時点で10媒体以上に及んだと言われています。

主要メディアの見出しをいくつか引用しましょう。

  • 「新しい大型パンダ? いいえ、トヨタ・シエンタです」(アル・ヴォランテ)
  • 「フィアット・パンダのクローン」(アウトプローヴェ)
  • 「パンダに似た日本のマルチスペース」(モーターワン)
  • 「ああ、私にはフィアット・パンダに見える」(アウトパッシオナーティ)
  • 「新シエンタはパンダに似ている」(フォーミュラパッション)

さらに驚くのは、イタリアの全国紙『コリエッレ・デッラ・セーラ』の電子版までが「日本版パンダ」としてシエンタを取り上げたこと。イタリアを代表する老舗日刊紙がヨーロッパ未販売の日本車のデザインについてわざわざ記事にするのは、かなり異例のことです。

また、イタリア人に画像を見せてブランドを当ててもらった実験では、「フランス市場向けの新型パンダだろう」「中国じゃなく今度は日本まで!」といった反応が得られたという報告もあります。

パンダはイタリアにとってただのクルマではなく、「国民車」として誇りに思われている存在です。そのデザインに酷似した日本車が登場したことで、イタリア国民の「ちょっと待ってよ」という感情が反応した、という側面もあるでしょう。

参考:第772回:イタリアのメディアも続々報道 やっぱり何かに似ている(WEB CG)

パクりなのか?デザインの類似をどう考えるか

外観の類似とコンセプトワードの一致という状況を踏まえたうえで、「シエンタはパンダのパクりなのか」という根本的な問いを考えてみます。

「参考にした」可能性は高い

デザイン評論家や自動車ジャーナリストの多くが指摘するのは、「偶然にここまで似ることは考えにくい」という点です。

シカクマル(四角+丸)とスクワークル(四角+丸)は概念として同一であり、外観にも複数の共通要素が見られます。トヨタのデザインチームが世界中の優れた先行デザインを研究するのは当然のことであり、「パンダのデザインを参考にした」という可能性は、デザイン観点から見て黒寄りのグレーと言えるでしょう。

「パクり」とは言い切れない理由

一方で、「パクり=意図的な無断模倣」と言い切るには慎重になる必要があります。

自動車デザインはグローバルなトレンドの中で進化するもので、似たようなデザイン言語が複数のブランドで同時期に生まれることは珍しくありません。「シカクマル」というコンセプトは、今日のスマートフォンやプロダクトデザイン全般に広く見られる「角丸デザイン」の潮流とも一致しています。つまり、パンダだけでなく時代のトレンドに影響を受けた結果として「似てしまった」という解釈も成り立ちます。

また、サイドのキャラクターラインやCピラーの処理といった個々の要素は、パンダ固有のデザインとまでは断言しにくい部分もあります。シトロエン・ベルランゴやルノー・カングーなど、ヨーロッパのファンクショナルカーには共通するデザイン傾向があるためです。

さらに、「丸みを帯びた四角いボックス形状のミニバン」というフォーマット自体、機能的な必然性がある部分でもあります。室内空間を最大化しつつコンパクトに見せようとすれば、自ずとこの方向に近づくとも言えます。

トヨタの公式見解

なお、トヨタは今もこのデザイン類似問題について公式なコメントを出していません。あくまでシエンタ独自のデザインコンセプトとして「シカクマル」を発表しており、パンダとの関係性には触れていない状態です。

デザインが似ていても、クルマとしては別物

パクり疑惑の話題ばかりが先行しがちですが、実際にカーライフで選ぶとなれば、両車はまったく異なる選択肢です。

シエンタが向いている人

シエンタは子育て世代のファミリーカーとして設計されています。最大7人乗りで両側パワースライドドアを装備、荷物の多い家族連れでも使いやすい室内空間が魅力です。ハイブリッドモデルを選べばWLTCモードで28.8km/Lという優秀な燃費も実現できます。

また、価格帯は207万円〜と輸入車と比べてリーズナブルであること、トヨタのディーラーネットワークによるメンテナンスの安心感も大きなポイントです。

フィアット・パンダが向いている人

パンダはイタリアのデザインと文化を日常で味わいたい人向けのクルマです。コンパクトなボディサイズは都市部の細い道や駐車場での扱いやすさに直結します。個性的なデザインとイタリア車らしい楽しさを求める人にとっては、シエンタにはない魅力があります。

ただし、3代目パンダ(319型)の国内販売は2024年7月に終了しました。現在フィアットは後継モデルとして、より大型で現代的なデザインを持つ「グランデパンダ」を展開しており、日本市場への導入も2026年春頃とアナウンスされています。

シエンタとパンダの「似ている」を前向きに捉えると

「パクり疑惑」という視点で語られることが多い両車の類似ですが、見方を変えれば、「世界的に評価されたパンダのデザイン哲学と同じ方向性を、日本のファミリーカーが採用した結果、手頃な価格・使いやすいサイズで日本市場に登場した」ということでもあります。

事実、「パンダのデザインが好きだったけど高くて手が届かなかった」「維持費を考えるとシエンタの方が現実的」という声もあり、シエンタの売れ行きには「イタフラ車テイストへの憧れ」が影響している可能性も少なからずあるでしょう。

まとめ:「似ている」は本当、「パクり」かは議論の余地あり

トヨタ・シエンタとフィアット・パンダのデザイン類似問題をまとめます。

  • デザインコンセプトが「シカクマル(四角+丸)」と「スクワークル(四角+丸)」で一致している
  • フロントグリル、Cピラー、クオーターウィンドウ、縦型テールランプ、サイドプロテクターなど複数の外観要素が酷似
  • ボディカラー「アーバンカーキ」とパンダの「グリージョモーダ」も近似
  • イタリアのメディア10媒体以上が「パンダのクローン」と報道
  • ただしスペックや車格は別物。シエンタはミニバン、パンダはコンパクトハッチ
  • 「参考にした可能性は高い」が、「完全なパクり」と断言するのは難しい
  • トヨタは今もこの件に公式コメントなし

似ているかどうか? 確かに似ています。ただ、それがユーザーにとって「買わない理由」になるかというと、シエンタは2025年もミニバン販売台数1位を維持しており、市場の評価は明確です。クルマを選ぶ際は、デザインの元ネタよりも、自分のライフスタイルに合うかどうかを基準にするのが一番でしょう。

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